トラブルガイド
成形不良
ヒケ
成形品外表面に発生する凹(窪み)。 主に高外観を要求される外観モールド部品の要求品位によって、その発生が問題視されるか否かは異なります。時として製品品位上、外観不良として判断されるケースも少なくありません。
ヒケは樹脂の体積収縮(等温PVT特性)に依存する挙動で、射出成形行程内における各部位の時刻歴的な履歴、即ち射出時の溶融状態から保圧行程・冷却行程の固化状態に至る過程に発生します。
金型内に充填された溶融樹脂は、金型表面を通じ冷却固化されます。 この成形品外表面から固化が進む冷却固化(保圧、冷却)の過程において、設定射出条件(保圧圧力/時間)により、PVT特性に 伴う体積変化(体積収縮)を補う事ができない場合、成形品表面に位置する樹脂が、内部の溶融状態にある樹脂の体積収縮に伴う引っ張り(収縮力)により、成形品外観に品位を損なうヒケ(凹痕)を発生させます。
一方、成形品外表面が収縮力に絶えうる強度(固化層を有する)を有する場合には、内部にヒケ巣(ボイド)が発生し、外観上問題には至らないケースもあります。 また、製品形状(ボス、リブ、板厚、偏肉等)や金型構造 (冷却管デザイン、金型材質、冷却媒体等)に起因する潜在的要因については、製品設計、金型設計の段階で 事前対策を講じなければヒケは解消しません。
部分的なヒケ(裏面形状の影響/流動末端)
ヒケのチェックポイントと項目
影響項目
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原因
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対策
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製品 | 肉厚 | 厚い・偏肉(薄い) | 肉盗み・均肉化・厚く 【参照】 製品設計ガイド(肉厚) |
ゲート位置・方式 | 不備(デザイン制限) | 点数追加・方式変更 | |
成形条件/ 成形機機能 |
材料温度 | 高い(低い) | 下げる(上げる) |
金型温度 | 高い(低い) | 下げる(上げる) | |
射出速度 | 速い(遅い) | 下げる(上げる) | |
V/P切り替え | 切り替え速い | 位置を遅く | |
保圧圧力 | 低い | 上げる | |
保圧時間 | 短い | 延長 | |
背圧 | 低い(計量バラつき) | 上げる | |
スクリュー回転数 | 回転による昇温 | 下げる | |
クッション量 | 計量不足・バラつき | 増す(過剰NG) | |
機械的バックフロー | 正常部品に交換 | ||
計量 | 不足 | 増す | |
型締め力 | 不足(バリ発生) | 増す | |
金型 | ノズル穴 | 断面小(小さい) | 増す |
スプルー | 断面小(小さい) | 増す | |
ランナー | 断面小(小さい) | 増す | |
ゲート | 断面小(小さい) | 増す | |
冷却回路 | 不足(温度ムラ) | 増やす/均一化 | |
方式不適合(効率) | 方式変更 | ||
流量小/圧損大 | 効率改善 | ||
金型材質 | 冷却効果不備 | 良熱伝導材料使用 |
成形品全体のヒケ
ヒケのチェックポイントと項目
影響項目
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原因
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対策
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製品 | 肉厚 | 厚い・偏肉(薄い) | 適正板厚 【参照】 製品設計ガイド(肉厚) |
ゲート位置・方式 | 不備(デザイン制限) | 点数追加・方式変更 | |
成形条件/ 成形機機能 |
材料温度 | 高い(低い) | 下げる(上げる) |
金型温度 | 高い(低い) | 下げる(上げる) | |
射出速度 | 速い(遅い) | 下げる(上げる) | |
V/P切り替え | 切り替え速い | 位置を遅く | |
保圧圧力 | 低い | 上げる | |
保圧時間 | 短い | 延長 | |
背圧 | 低い(計量バラつき) | 上げる | |
スクリュー回転数 | バックフロー | 下げる | |
クッション量 | 計量不足・バラつき | 増す(過剰NG) | |
機械的バックフロー | 正常部品に交換 | ||
計量 | 不足 | 増す | |
型締め力 | 不足(バリ発生) | 増す | |
金型 | ノズル穴 | 断面小(小さい) | 増す |
スプルー | 断面小(小さい) | 増す | |
ランナー | 断面小(小さい) | 増す | |
ゲート | 断面小/点数小/位置 | 増す/追加/変更 | |
冷却回路 | 不足(温度ムラ) | 増やす/均一化 | |
方式不適合(効率) | 方式変更 | ||
流量小/圧損大 | 効率改善 | ||
金型材質 | 冷却効果不備 | 良熱伝導材料使用 |
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