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よくあるご質問

樹脂特性について

ABS樹脂にPVCシートが接触する構造はABSに劣化(ストレスクラック)が生じると言われますが、なぜですか。また、油類も付着するとよくないと言われますが、なぜですか?

※ 当サイトの 耐薬品性について のページも御覧ください。

ABS樹脂に何らかの物質が接触し劣化(ストレスクラック)が発生する問題は、樹脂の耐薬品性の考え方で説明されます。
ABS樹脂を溶解させる様な強い溶剤でなくても、ABS成形品に成形過程で発生した内部応力(残留応力)がある場合には、氷酢酸、アルコール、ガソリンなどABSを溶かしはしないが、膨潤あるいは浸透性(アタック性)のある薬品が接触することで、成形品の応力部を基点に亀裂(ストレスクラック)を生じます。

PVCシートが接触する場合にABSにストレスクラックが発生するのは、PVCシート(軟質PVC)に含まれる可塑剤が、PVCシート側からABS樹脂側へ一部移行することによってABSにアタック性のある薬品として作用し、ストレスクラックを発生させています。
過去から、質問にあるようなPVCシートによるABSの劣化がよく見られましたが、最近はPVCシートの可塑剤が無移行性可塑剤に変更されており、このようなABSの劣化現象は少なくなっています。

ABSにストレスクラックを発生させる(アタック性がある)薬品は、下の表にあるように各種あります。油でも動物性と植物性でアタック性に差があり、植物性の方が強い傾向があります。
このストレスクラックの発生は、ABS以外の樹脂についても同様に発生しますが、その薬品に対する樹脂の耐薬品性は、樹脂の組成と薬品の化学的組成による影響と、成形品の歪み量の影響を強く受けます。

ABS樹脂の一般的な物質に対する、耐薬品性の評価方法は1/4楕円法による歪みと薬品塗布によるストレスクラックが発生する歪み量(臨界歪み値)で判定されます。
一般的なABS樹脂の耐薬品性データを表に示します。

ABSの耐薬品性

薬品名 臨界歪 (%) 薬品名 臨界歪 (%) 薬品名 臨界歪 (%)
10%塩酸
10%カセイソーダ
エチルアルコール
ガソリン
灯油
シリコンオイル
シリコングリス
サラダ油
ごま油
バター
食酢
0.7以上
0.7以上
0.25
0.2以下
0.5
0.7以上
0.7以上
0.56
0.63
0.62
0.7以上
ヘアースプレー
ヘアートニック
クレンジングクリーム
ヘアーリキッド
香料ブーケ
森林浴
フロンR-11
防錆剤
切削油
アースエアゾル
インキ
0.22
0.31
0.45
0.56
0.25
0.24
0.68
0.6
0.3
0.48
0.5
ファミリー
ママレモン
強力ルック
マイペット
ママローヤル
チャーミーグリーン
トイレマジックリン
トイレルック
クイックル
DOP
(PVC可塑剤)
0.45
0.7以上
0.2以下
0.31
0.5
0.42
0.29
0.7以上
0.7
0.2以下
試験方法:テクノ(旧三菱化学)ベンディングフォーム(1/4楕円)法
23℃、17時間、テストピース 2mmプレスシート
薬品名 臨界歪 (%)
10%塩酸
10%カセイソーダ
エチルアルコール
ガソリン
灯油
シリコンオイル
シリコングリス
サラダ油
ごま油
バター
食酢
0.7以上
0.7以上
0.25
0.2以下
0.5
0.7以上
0.7以上
0.56
0.63
0.62
0.7以上
薬品名 臨界歪 (%)
ヘアースプレー
ヘアートニック
クレンジングクリーム
ヘアーリキッド
香料ブーケ
森林浴
フロンR-11
防錆剤
切削油
アースエアゾル
インキ
0.22
0.31
0.45
0.56
0.25
0.24
0.68
0.6
0.3
0.48
0.5
薬品名 臨界歪 (%)
ファミリー
ママレモン
強力ルック
マイペット
ママローヤル
チャーミーグリーン
トイレマジックリン
トイレルック
クイックル
DOP
(PVC可塑剤)
0.45
0.7以上
0.2以下
0.31
0.5
0.42
0.29
0.7以上
0.7
0.2以下
試験方法:テクノ(旧三菱化学)ベンディングフォーム(1/4楕円)法
23℃、17時間、テストピース 2mmプレスシート

【結果の見方】
本試験結果の臨界歪値から、実際の使用時での目安を下記に示します。
尚、この目安はあくまでも試験片の結果から実使用時での、白化、クラック等を推定したものです。貴社での実用試験にて、確認をお願いします。

臨界歪値  0.3%以下: 実使用不可レベル。製品組立、輸送などの軽微な応力によりクラックが発生する可能性大。
0.3~0.7%: 薬品との接触により、白化、クラックが発生する恐れのあるレベル。特に、強い応力を受けた場合には注意が必要です。
0.7%以上: 実使用可能なレベル。薬品との接触により、クラック等の発生する可能性は低い。
臨界歪値 
0.3%以下 :
実使用不可レベル。製品組立、輸送などの軽微な応力によりクラックが発生する可能性大。
0.3~0.7% :
薬品との接触により、白化、クラックが発生する恐れのあるレベル。特に、強い応力を受けた場合には注意が必要です。
0.7%以上 :
実使用可能なレベル。薬品との接触により、クラック等の発生する可能性は低い。


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ストレスクラックを抑制する手段としては、原因となる2つの要因に対する対策が有効で必要です。

  1. 成形品の残留応力の軽減を図る。
    成形品の残留応力をアタック性のある薬品の持つ臨界歪み値以下にし、ストレスクラックを防止する。具体的には、成形品の形状対策、成形性条件の最適化等の成形側の対策が中心となります。
  2. PVCシートの添加剤種を変更するなど接触する薬品の種類を変更する。あるいは接触自体を防止する。
    使用する薬品類をアタック性の低い物に変更するか、接触しないようにするなど薬品側の対策が中心となります。